鼻を失った保護犬がアメリカに渡って手に入れた奇跡
アヌビスは飼い主が大好きな、ごく普通の犬です。彼には鼻がないことを除いては。
アヌビスについてはっきりしていることは、彼はかつてエジプトのカイロにいたこと。
地元の保護団体『The Animal Protection Foundation』が彼を見付けたときは、
路上駐車されている車の下で怯えながら血を流していたこと。
そして、彼の鼻の半分が、切り落とされていたことでした。
保護団体の職員の話では、アヌビスの元飼い主は、鳴き声がうるさいことを理由に、
鼻を切り付けるという虐待以外の何物でもない、信じ難い制裁を加えたのだそうです。
鼻を失った後、アヌビスは数年の間、路上で生活していました。
鼻がないために、上の歯はなく、舌は丸見えの状態だったアヌビス。
どうにか食べ物を見付けても、顔を横向きに道路に付けて、舌ですくうようにして食べる必要がありました。
そのせいか、保護されたときのアヌビスの健康状態は思わしくなかったそう。
この痛ましいニュースを耳にしたのは、アメリカに住むデクリート夫妻でした。
夫妻はアヌビスを見た途端、何があっても彼を助けたいと思ったそう。
夫妻がアヌビスの里親になるのは、彼らの強い希望でした。
しかし、個人でアヌビスをエジプトからアメリカに航空輸送するには、経済的な問題が立ちはだかっていました。
そんな折、夫妻に救いの手を差し伸べたのが、ルイジアナ州を本拠地とする動物保護団体
『Special Needs Animal Rescue & Rehabilitation( SNARR )』。
SNARRは過去にも世界中の保護動物のアメリカへの輸送を手掛けていました。
さっそく彼らの手配で7000マイルに及ぶ航空輸送のための資金調達がなされ、
アヌビスをエジプトからアメリカへ移動させることになりました。今年の1月のことです。
ニューヨークのJFK空港到着後の移動は、非常に大掛かりなものでした。
『25-leg-trip』と命名されたリレー・ミッションは、数え切れないほどのボランティアの人々が少しずつ車の運転を繋いで、
最終目的地のテキサス州エルパソまでアヌビスを連れて行くものでした。